照明と音楽がギャンブル中の行動に与える影響

人々の娯楽施設としてカジノがオープンして以来、音楽や照明がギャンブル中の行動に与える影響について、世界中で実験が行われてきました。カジノ以外の多くの産業においても、音楽や照明などを使って雰囲気作りをすることはよくあります。しかし、カジノにおけるこれらの要素や実験の背景には、より深い心理的なねらいがあるのです。

実店舗カジノ、オンラインカジノに関係なく、経営者はプレイヤーができるだけ長く滞在してプレイし続けてくれるように、居心地の良さを追求することに余念がありません。また、よりハイリスクなベッティングを心おきなく楽しんでもらい、刺激的な時間を過ごしてもらいたいと考えています。『The Role of Light and Music in Gambling Behaviour(ギャンブル行動における照明と音楽の役割)』という研究では、音楽、音、照明の条件を変え、プレイヤーを被験者として実験を行いました。

その結果、ハイテンポでエネルギッシュな音楽と赤い照明を組み合わた環境では、プレイヤーがより速いテンポで、またより大きな資金をかけてギャンブルを行う傾向があることが明らかになりました。反対に、青色の照明を使った場合の影響は少なかったそうです。また、赤い照明だけの場合や、ハイテンポな音楽だけの場合も、影響は比較すると小さくなりました。さらに、ハイテンポな音楽はベッティングのスピードを上げることはあっても、金額には影響を与えないことが分かりました。

一方、プライベートでポーカーを楽しむプレイヤーの場合には、グレゴリオ聖歌やクラシック音楽のようにより静かで穏やかな音楽を好むそうです。こうした音楽には、集中力を高める効果があるからでしょう。ポーカートーナメントで、集中力を高めるためにヘッドフォンをして、好きな音楽を聴いているプレイヤーをよく見かけるのもそのためです。

スロットマシンの音楽

スロットマシンは世界中で人気がありますが、人々が夢中になるのはマシンから流れてくる音の効果だとよく言われています。しかし、よほど音量が大きくない限り、音楽が流れていることに気づく人はあまりいません。いくつかの研究によると、スロットマシンで流れる音楽のタイプやジャンルが、プレイヤーのマシンの好みに関連性があることが分かっています。つまり、マシンから流れてくる音楽は、プレイヤーがやっと聞き取れる程度の微音量でかけられていることが多いのですが、効果は絶大なのです。

多くの人は、「スロットマシンの音楽はランダムに選ばれている、あるいはマシンのテーマに合わせているだけだ」と思っていますが、それは大きな間違いです。プレイヤーに長時間マシンの前に滞在してもらう、同じマシンに何度も足を運んでもらうために、慎重に選ばれているのです。

これは、テレビゲームのBGMも同様です。場面に合わせて、ゲームの世界に入り込んだような気持ちにさせ、全体的な雰囲気を楽しんでもらえるようなゲーム体験を提供しているのです。BGMを聴きながらゲームをすることで、よりゲーム体験を楽しめるようになり、満足度が上がるという研究結果もあります。さらにテレビゲームとカジノゲームの両方において、プレイ中に流れるBGMが耳に入ることで、プレイヤーが時間の感覚を失うという効果もあります。このようにゲームのメーカーやカジノは、プレイヤーにより長時間プレイしてもらうことを狙って音楽を利用しているのです。